2012年10月1日月曜日

風のフレとマークまでの距離の変化

突然マニアックな話になりますが、ヨットレースは風のフレをうまく使えるかどうかで順位が大きく変わります。
まずは図1をみてください。

図1
4艇のヨットが図の上方にある赤い丸(以下マークと呼びます)をめざして進んでいます。

風は図の上方から吹いており、各ヨットは右斜め前から風を受けながら、風に対して45度の方向に進んでいます。

ヨットは風に対して45度にジグザグに進んでいけるので、図のグリッド線に沿って進むことになります。

この時、グリッドの実線1マスを1BL(BoatLength:艇身)とすると、各艇のマークまでの距離は
  • 白艇:4BL
  • 赤艇:6BL
  • 緑艇:6BL
  • 黄艇:8BL
となります。
白艇と赤艇は頭を並べていますが、2BLの差があるわけです。
一方、赤艇と緑艇は一見すると赤艇が先攻しているように見えますが、実はマークからの距離は同じです。


ここで、一瞬にして風が 20度画面左方向にフレました。とします。

風の向きが変わると、ヨットはその風に対して45度で進むことになるので、すると図2のようになります。

図2
各艇のマークまでの距離は
  • 白艇:3.75BL
  • 赤艇:5BL
  • 緑艇:6.25BL
  • 黄艇:7.5BL
となっています。

図1で2BLあった白艇と赤艇の差が、図2では1.25BLに縮まっており、
逆に白艇と緑艇の差は2BLから2.5BLに拡がっています。
また、イーブンだった赤艇と緑艇は赤艇が1.25BL先行しています。

実は白艇と黄艇の差もわずかに縮まっています。
一般に市販されているテキストなどでは白艇と黄艇の差は変わらないとされていますが、図4を見ればわかるとおり、こちらが正しいです。


ここで再び、一瞬にして風が40度画面右方向にフレました。とします。(図1からすると20度右方向です)

図3

各艇のマークまでの距離は
  • 白艇:3.75BL
  • 赤艇:6.25BL
  • 緑艇:5BL
  • 黄艇:7.5BL
となりました。

白艇と黄艇の差は図2と同じですが、
赤艇と緑艇の関係が変わっており、今度は緑艇が先行した状態になっています。


どの図においても各ヨットは何もせずただ風に対して45度でいただけなのですが、風がどちらに(どれだけ)フレるかで、順位を上げたり落としたり、差が縮まったり拡がったりしています。

この性質を利用して得をするには、
「集団よりも風が次にフレる方に近い方(図2なら左、図3なら右)に位置するようコースをとる」
ということになります。

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 かなりどうでもいいレベルでマニアックなおまけ:白艇と黄艇のフレによる差の変化

図4

常識的には、図1で白艇と黄艇のような位置関係にある場合、図2や図3のように風がフレても両艇の差は変わらないとされる。

しかし、「風がフレても白艇と黄艇の直線距離が変化しない」ということが言われているなら、それは無意味だ。図1~4において全ての船の直線距離は変化していない。
※舵社「ヨットマンのためのためのレーシングタクティクス虎の巻」P39ではまた異なる説明の仕方で「高さが変わらない」と図を用いて説明されているが、図で抑えられている方の船のポテンシャルラインを見ると、左右に振れた時のラインは中間の時よりも明らかに下がっており(幾何学的に当然だ)、左右に振れた時に差が縮まる事を示している。


実際、図2においても図3においても、差は変化している。図5でよりわかりやすく示した。

図5:黄艇のポテンシャルラインに注目。



これが図の誤りや誤差でないことは、図4を見れば明らかで、図1では4艇身あった差が図4では3艇身に縮まっており、黄艇は45度のフレで1BLゲインしている。

さらに、これは図4のように右方向にフレた場合でも、逆に左方向に45度フレた場合でも同じなので、
白艇はライバル艇を風軸下に置くと
どちらにフレても差が縮まる
ということが言える。

逆に言うと、図4(は極端だが)や、あるいは図3のようなフレきった状態から図1のようなフレの中間にもどるまでの間は、差が拡がり続け、中間から図2のように反対にフレきるまでは再び差が縮まっている。

・・・ということは、
追いかける黄艇視点で見れば、
最も白艇との差が縮まる「フレきったタイミング」で白艇の風軸線上に戻ってくるようなコース取りを繰り返せば、徐々に白艇との差を縮めていけるということにならないだろうか??

常識的には、フレが周期的な場合はフレ幅の中間でタックするのが最もマークに近づくので、上記の仮説はにわかに信じがたい。今回の図では各艇がまったく動かず、風が一瞬で変化する想定だったので、上の仮説を検証するにはまた別な図をひく必要があるだろう。

念のため付記しておくと、
ライバル艇を風軸下で抑える行為が無意味というわけではない。
風軸からずれた位置にいると、ライバル艇側に風がフレた時に差が縮まる量がより大きくなるからだ。
だから、ライバル艇を風軸下でおさえた場合、
どちらにフレても差が縮まるが、他の位置関係よりフレの影響が少ない
というあたりが正確だろう。